
今更ですが、WIRES-Xを始めてみました。
WIRES-Xとは、八重洲無線が提供しているアマチュア無線のVoIPシステムです。
D-STARとは違い、いわゆるレピータの山かけ運用はできない(やってはいけない?)ようですが、D-STAR同様インターネットを通じて世界中のアマチュア無線局と通信できます。特に、WIRES-XにはROOMという機能があり、そのROOMにつなげばラウンドQSOも可能です。(これは、D-STARもリフレクタを使えば可能ですが…)
個人的に最大の利点と思っているのは、HRI-200という装置がを使えばWIRES-Xでアナログ音声も使えるということです。デジタル変調に比べるとやはりアナログは音質も良く聞きやすいです。(もちろん、VoIPではデジタルに変換されますが)
今回は、本来なら無線機を接続してつかうHRI-200にアナログ音声回路をつなぎ、無線機を使わずにWIRES-Xに接続する装置をつくりました。調べてみると、以前、「無線機無しでWires-X」としてキットも頒布されていたようです。簡単WIRES-Xとも呼ばれているようです。
いわゆる簡単WIRES-Xは製作例も多くありますが、今回は改良版(になっているのか?)として自分で作ってみようと思いました。無線機の費用が掛からないということで、無銭WIRES-Xがと称することにしました。本当は無銭じゃなくて零銭(小銭?という意味の中国語)の方が適切かもしれませんが。
主な仕様は以下のとおりです。
- ハンドマイクやスタンドマイクなど外部マイクが使え、普通に交信をしている感じで使える
- 音声AMP、SPを内蔵して最小構成で使用できる
- DTMFを送出して、ノードやルームを切り替えられる
DTMFは10個プリセットでき、よく使うノードやルームのDTMFを登録できる(変更も可能) - WIRES-Xのタイムアウトが3分なので、1分前からLEDを点滅させる。また、残り30秒以下になると10秒毎にビープ音でも通知する。
- 電源はモービル搭載を考慮し、13.8V対応。
回路図

主要部品
一部の部品を除き、ほとんどの部品は秋月電子で購入可能です。
- マイクアンプは、NJM2783を使用しています。
ALC内蔵のアンプですが、この用途には不要だったかなとも思っています。 - DTMFジェネレータは、HT9200Aです。SOP 8pinでシリアルで制御します。このICはAliExpressで購入しました。
- 制御マイコンは、STM32F103C8T6のBlue Pillです。
- キーボードは、AliExpressで購入した16キーのものですが、同じものがAitenndoでもプロ版キーパッド [KP4X4PRO]として購入可能です。
- 音声アンプ HRI-200からの音声をSPから再生します。
適当な出力のアンプが使えます。移動などで使う事も想定して少しパワーがあるアンプを使用しました。 - SPケースに入るサイズでなるべく大きいものを選ぶと良いでしょう。
私は手持ちの40mmのものを使いました。 - ミニDIN 6pinコネクタ
HRI-200との接続に使用します。 - まだ一部配線を固定していませんが、内部の写真です。
ケースは以前作ったDTMFキーヤーでも使ったダイソーのプラスチックケースです。
基板サイズは90mm x 90mmですので、一番大きいケースを使いました。

HRI-200の設定
とりあえず、私の設定です。
ファイル → 無線機設定
無線機送受信は 「受信:FM ー 送信:FM」 を選択します。
実際には電波を出さないので、運用周波数は適当でOKです。周波数非公開にチェックします。

ファイル→機器設定

DTMFミュート動作は Auto mute に設定するのが良いでしょう。。
基本運用情報、自局Room設定、その他は、WIRES-Xのマニュアルに従って設定します。
接続
- Wires-Xアプリを実行するPCとHRI-200をUSBケーブルで接続します。
- HRI-200の RADIO 1に附属のミニDIN 10ピン→6ピンを使い、本機のミニDINコネクタに接続します。
- マイク端子にハンドマイク等を接続します。
- 安定化電源から13.8Vを供給します。
使用方法
【使用上の注意】
電源電圧は、13.8Vです。16V以上の電圧がかからないようにご注意ください。
電源投入時にSPからポップ音が出ますので、電源を入れる前にボリュームを絞ってから電源をいれることを推奨します。
【LED表示】
・青: アイドル状態 電源は入っているが、送信も受信もしていない状態
・赤: 送信状態 PTTを押して送信している状態
通常のWIRES-Xでは、トランシーバーの受信音声がネットワークに送出されている状態です。
・紫(青+赤): 受信状態
通常のWIRES-Xでは、WIRES-X の受信音声がトランシーバーから送信されている状態です。
【操作方法】
キーボードの動作は、ノーマルモードとプリセットモード、学習モード、オプション設定モードがあります。モードの切り替えは、キーの2重押しで行います。
基板上のSWによりワンキーで操作可能です。(オプションモードへの切り替えはできません)
(1) NORMAL MODE: 基本はこのモードになっています。(別のモードに切り替えても、操作が完了するとこのモードに戻ります)
押したキーに相当する DTMF を送出します。
NORMAL MODEに切り替えるには、1 と A を同時に押します。
NORMAL MODEに切り替わると、モールスで N を送出します。
(2) PRESET MODE: 0~9のキーに登録したDTMFプリセットを送出します。
PRESET MODEに切り替えるには、4 と B を同時に押します。
PRESET MODEに切り替わると、モールスで P を送出します。
送出したいプリセット番号のキーを押します。
プリセットを送出終わると、NORMAL MODEに戻ります。
プリセット初期値
PRESET_6: #66666 check connection
PRESET_9: #99999 DISCONNECT
(3) LEARN MODE(学習): プリセット内容を変更します。
LEARN MODEに切り替えるには、7 と C を同時に押します。
LEARN MODEに切り替わると、モールスで L を送出します。
変更したいプリセット番号 0~9のいずれかを押します。
記憶する DTMFを押します。 例 #20973
* を押して終了します。
一つ記憶させるとNORMAL MODEに戻ります。
例 プリセット 1 に #20973 を記憶させる場合
7 + C, モールス Lを確認, #20973* を入力します。
最後の * は記憶されません
(4) オプション設定モード: キーを押したときの音を変更することができます。
オプション設定 MODEに切り替えるには、* と ♯ を同時に押します。
オプション設定 MODEに切り替わると、モールスで T を送出します。
オプション 01: OPTION_CW_BEEP_KEY
KEYを押したときのBEEPの種類を切り替える
0: 無音(音を出さない)
(DTMFを送る場合、SPからDTMFの音は聞こえます)
1: 短点(E)を出す
2: KEYをモールスで出す
オプション 02: OPTION_CW_BEEP_PRESET
PRESETを選んだ時のBEEPの種類を切り替える
0: 選んだプリセットキーをOPTION_CW_BEEP_KEYの設定で出す
(SPからDTMFの音は聞こえます)
1: プリセットの内容をモールで出す
※ YAESUの仕様に基づき、 * を E、 # を F として モールスを送出します。
初期値は 01, 02とも 0 です。
変更例: 01 を 2に変更する場合
* + #, モールス Tを確認, 01#2* を入力します。
設定が完了すると、NORMAL MODEに戻ります。
【設定初期化】
プリセット、オプションを初期状態に戻したい場合は、
基板上のSW1 NORMALスイッチを押しながら電源を入れてください。
モールスで INIT ALL を送出します。
*プリセット、オプションを別々に初期化することはできません。
両方とも初期化されます。
反省点と今後の改善
- アイドル状態でSPから若干(HRI-200からの)ノイズが出るので、音声AMP入力にMUTE回路を追加したい
- 音声AMPは基板に内蔵した方が良かったかも
- 5V単一電源で動作させるようにした方が良かった?
- もっと部品を詰めて小型にすれば良かった
電波出さないのは無線じゃない!と言われましたが、とりあえず、作ってみるのが目的なので(笑)
お蔭でちょっとだけWIRES-Xが理解できたかも。