KENWOOD TH-89を修理した

投稿者: | 2024/11/19

なんとなくヤフオクで見つけ落札したジャンクのTH-89を暇つぶしに修理してみました。
TH-89は、1995年発売の430/1200MHz Dual Bandトランシーバーです。もう、30年ぐらい前の機種ですね。

入手したTH-89はジャンクの名に恥じず、うんともすんとも言いませんでした(笑)
分解してみるとNi-Cdバッテリーが液漏れしているようでした…えええ、きっちゃなー
基板を外して洗浄し、腐食したハンダ等を修正し、ケーブルをつなぎなおして電源を入れてみると電源は入りましたが液晶表示はすだれ状に縦、横とも欠けて、なにか表示されているけど…肝心の周波数は読めない状態です。また、キー操作時のビープ音は出るものの受信音は全く出ません。ダミーロードにつないで送信テストをすると送信電波は出ているようでした。ただし、周波数がわからないので変調が正常かどうかはわかりませんでした。ちゃんとしたジャンクでしたね(笑)

TH-89のサービスマニュアル、回路図は入手できませんでしたが、TH-79の回路図とサービスマニュアルはネットから入手できました。ただし、RF UNITはもちろん全く違いますが、CONTROL UNITもTH-89とTH-79では一部異なるようです。まぁ、CONTROL UNITは大体一緒だろうということでTH-79の回路図を参考にすることにしました。

液晶表示NG

TH-89,TH-79の液晶(LCD)表示がダメになるのは定番の不具合で、基板と液晶モジュール(LCD)を接続している導電ゴムの接触が悪くなり、正しくデータが送れなくなるのが原因の一つのようです。交換用の導電ゴムが時々ヤフオクに出品されていましたが、ここ最近は出品されていないようです。
自分でサイズを切り出すのであれば、AliExpressでも購入することは可能です。Zebra Strips connectorとかconductive silicone rubber connectorとかで検索すると出てきます。ピッタリのサイズはなさそうなので、適当な幅の導電ゴムを買って自分で切り出すか、特注でサイズを加工してもらうかですね。
とりあえずはゴムと基板、LCDの端子をアルコールで洗浄し、ゴムについた凹みを見ながらLCDの端子と基板のランドに上手く接触するように合わせとりつけます。

ただし、この導電ゴムの接触を直しても縦横一直線に入った筋は直らない場合があります。この筋は、液晶とフィルム基板を接続している箇所の接触不良か、フィルム基板、もしくはフィルム基板上のICが不良になって発生している可能性が高いです。上手くやれば液晶とフィルム基板の接触はなんとかできるかもしれませんが、ICやフィルム基板そのものに不具合がある場合はあきらめた方が良いでしょう。程度の良いLCDを探して交換するのが一番です。結局、私もジャンクのTH-79から程度の良いLCDを探して移植しました。

LCDのもう一つの問題は、偏光シートの変色です。巷ではビネガーシンドロームと呼ばれているようです。LCDのガラスの上に貼られている偏光シートが経年劣化により変色してしまい、表示が見えなくなってしまう症状です。このようになったら、偏光シートを剥がして交換するしかありません。幸いなことにTH-89のLCDに貼られている偏光シートは柔らかく厚みがあるので、比較的簡単にはがせました。写真を撮るのを忘れましたが、LCDの端に薄い刃物などを差し込んで少しづつ剥がします。画面が黒くなっているLCDは接着剤も劣化が進んでいるので剥がしやすいと思います。若干酢酸のにおいはしたものの、そんなにきつくはありませんでした。
今回修理した感じでは、接着剤が経年劣化して偏光特性が変わったために黒くなっているように思えます。丸まってきていましたのでTACフィルムも劣化しているのかもしれませんが、上手く剥がせば偏光シートそのものは再利用できるようです。なるべく傷がつかないように注意して作業しましょう。もし、破れたり、傷付いたりした場合はAmazonなどで売っている偏光シートが使えるようです。まぁ、きれいにしたいのであれば最初から交換するつもりで、新品の偏光シートを準備しても良いでしょう。

偏光シートを剥がしたら、LCDのガラス面と偏光シートに残った接着剤をアルコール等できれいに洗浄します。少しづつアルコールを使って接着剤を剥がし、つどキムワイプ等でふき取っていくのが良いでしょう。

きれいにした偏光シートは、本体とLCDで挟み込むように上手く組み込みます。
(接着剤を取ってしまっているので、ちょっと作業が面倒です)

苦戦しながらも組み上げました。最初の写真です。偏光シートに少し傷があったり、ごみが入ったりしていますが、きちんと表示されるようになりました。もう一度分解すると、折角きれいに表示されるようになったのが、またダメになる可能性もあるので、これで妥協することにしました。

受信しない

CONTROL UNITとRF UNITを接続するフラットケーブブル(FFC)が不良になっているケースも多いようです。何度も分解や抜き差しをおこなうと断線したり、接触不良になることがあります。テスターで導通を確認したところ、コネクタ間の接続は問題ありませんでした。

TH-79の回路図を参考にすると、受信状態(RX)でも受信回路に電源が供給されていません。電源は、CONTROL UNITからFFCを通じてIC3 BU2090F6で制御しているようです。目視で見るとNi-Cdバッテリーの液漏れによると思われる腐食があるようです。つながっていそうな…切れていそうな…
部品の下のパターンやスルーホールの状態は見えないので、すっかりやる気ダウンです…

しばらく放っておいたのですが、またTH-89のジャンクを見つけ、性懲りもなく入手してしまいました。ニコイチ攻撃ですな。

新しく入手したTH-89は、もちろんジャンクで電源スイッチ入れると「プチ」と音はするものの、受信音も画面も表示しないというものでした。RF UNITが生きていることを期待して組み換えてみました。電源ON…スケルチを切ると「ザー」っと音がしました。良かった、生きてるようです。
SGでチェックすると、430MHzはOK、しかし、1200MHzは受信できません。う~ん?スケルチが開いている感じはするのに、受信音がありません。これは、あれ、ボリュームの不具合です。1200MHz側のボリュームは、エンコーダと一体になっています。基板をよく見ると、ランドが剥げて端子が接続されていません。リード線でつないで無事1200MHzも受信できるようになりました。

430MHzの送信出力が弱い?

受信できるようになったので、しばらくレピータやローカル局のQSOをワッチ(タヌキ)し、メモリーやスキャンのやり方を覚えていました。
まぁ、ロケーションの関係でハンディ機でQSOすることは殆どないのですが、とりあえず送信もチェックしてみることにしました。

終端電力計に接続して、パワーをチェックしてみました。
先ずは1200MHz、1W弱 まぁ、電力計も1.2GHz対応ではないのでこんなものかもしれません。近くに置いたON AIRランプも点灯しました。

次に430MHz、え?全く針が振れません。Hi-Power(5W)にしても全く振れません。ON AIRランプは、近くにもっていくと点灯しました。これは本当にパワーが出てないのか?
安定化電源につないで負荷電流をチェックすると、出力切り替えに応じて電流は変化しています。
Hi-Power(7V)で1.4~1.5A。他のトランシーバーでモニタすると電波はでて、変調も問題なくかかっています。出力をLo、ELと切り替えると電流も減少し、何となく電波も弱くなっているようです。
ファイナルは生きているようです。そうなると、怪しいのはANTスイッチのPINダイオードでしょうか。
まぁ、わざわざこのTH-89で送信する必要もないので、そのままにしておこうかとも思いましたが気持ち悪いのでやっぱり修理することにしました。


RF UNITを分解して基板を確認すると、

写真の真ん中あたり、2つの赤いコイルの間にあるPINダイオードのパッケージが膨らんでいます。
テスターでチェックするとオープンでした。部品の型番が不明なので、受信不能だったRF UNITから取り外して交換することにしました。PINダイオードが壊れた原因ですが、バイアス電流が足りず損失が大きくなって壊れた可能性も考えられます。となりのインダクタの直流抵抗を調べるともう一枚の基板より大きくなっていました。はっきりとはしませんが、断線しかかりとかの状態だったのかも知れません。これも交換しました。交換後ちゃんとパワーが出ている事を確認しました。

結局、ジャンクのTH-89を2台とTH-79のLCDを使ってなんとか修理できましたが、むきになって修理したため当初の予定よりコストがかかってしまいました(笑)
まぁ、貴重な430/1200のハンディトランシーバーが手に入りましたし、趣味を楽しめたということでOKにしておきます。

TH-89は、ドットマトリックスLCDを使った、当時としては高級なハンディトランシーバーだったのでしょうが肝心の表示部分が弱いとなると採用したのが良かったのかどうか微妙ですね。まぁ、ほぼ30年も経った無線機をまだ使おうとしている方が問題ないのかも知れません。しかし、JVC/KENWOODではまだTH-89の修理を受け付けてくれるそうなので、素晴らしいことです。もちろん、部品がなくなって修理できない場合も多くなっているようですが…
新しい1200MHz対応のリグを発売してくれれば絶対に購入するのですが、きっと行政の圧力などがあるのでしょうかね… 面白いバンドなので、アマチュア無線にはもってこいなんですけどね。

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