1200MHzレピータのSTANDARD RP70KFの調子が悪いということで預かりました。現在稼働している1200MHzレピータでは、このRP70KFが多く使用されているのではないでしょうか?
RP70KFは1987年頃発売された機種のようで、約40年前のものですね。新規の1200MHz FMモデルが出ないので頑張ってもらわないといけません。
不具合症状は、「しばらくQSOしているとだんだんと音がおかしくなってきて、QSOできなくなる」というものでした。このレピータはAC100Vではなく、太陽電池とLiFePO4バッテリーで稼働しているもので、タイマーで夜間はOFF、夜明けにONさせるという運用をされているものですが、時々朝起動しないということもあるそうです。こちらは、RP70KFの問題なのかバッテリーの問題なのか分かりませんが、電圧裕度も確認することにしました。
1200MHzの古いリグは周波数ドリフトが結構あるものが多いですが、レピータはそういうわけには行きません。周波数ドリフトの主な原因は発振回路、特に水晶発振子の温度変化です。そのためRP70KFは、水晶発振子を一定の温度に保ち、温度による周波数変動を抑えるオーブンをかぶせています。簡易的なOCXOですね。
預かったRP70KFの送信周波数は、起動後 約20分エージングしたところ約+3kHz(Ta18.5℃)のズレがありました。そのままエージングしていると3時間経過で約+10kHzのズレになっていました。これでは正常にQSOできないですね…
気にしていた定電圧動作は 11~11.5Vまでは大丈夫そうです。これならLiFePO4バッテリー動作でも実用上は特に問題なさそうです。
周波数ドリフトの方は、基準周波数5.12MHzのトリマコンデンサC064の不良が多いようなので、交換しました。オーナーが以前周波数を調整したときは直ぐにズレて調整が大変だったとのことでしたが、交換後は1kHz以内であれば難なく調整できるようになりました。オリジナルのトリマコンデンサは村田製作所のもののようです。温度特性も考慮されているのでしょうから、同じものに交換しました。
トリマコンデンサ交換後、周波数を調整し室温(Ta 25℃)で変動を計測したところ、起動時 -1.5kHz、約90秒で -1kHz以内、約150秒で-500Hz以内、約200秒で -100Hz以内までに落ち着きました。低温時にはもう少し安定まで時間がかかるとは思いますが、この程度の周波数ズレであれば電源投入後直ぐに更新可能と思います。あ、周波数はRb-GPSDOを基準周波数にした53132Aで調整、測定しています(笑)
以下、メモです。

5.12MHz水晶発振子X001はオーブンに入れられており、一定の温度に保たれていますが、発振回路はオーブンの外に配置されていて、サーミスタQ081とバリキャップQ078で温度補償されています。

オーブンはQX01とQX02をヒーターにして、サーミスタQX03で温度検出し温度を一定に保っています。サーミスタとトランジスタのB側は定電圧(8V)で安定化されており、電圧変動の影響を受けないように考慮されています。

トップカバーを外すと四角いオーブンのケースが見えます。錆びていますね…
オーブンのケース温度は32℃(Ta 約21℃)でした。ちょっと低いような…ネットの情報では結構熱くなると書かれていましたが…
ほんのり温かい程度でした。

上部のCPU基板を外すと、オーブンの横に赤のトリマーコンデンサC064 20pFが見えます。このトリマーコンデンサを交換しました。オリジナルは村田製作所製TZ03R200E169B00のようです。
回路で温度補償されているようなので、同じ温特(N750±300ppm/℃)のものに交換します。

オーブンを外したところです。
5.12MHzの水晶発振子だけがオーブンに入っています。オーブンに入っているということは、SCカットでしょうか?SCカットの水晶は簡単には手に入らないと思いますので、水晶に問題ないことを祈ります。
汚れは、アルコールできれいにします。

オーブンの中を覗いたところ。ケースの内側に断熱材がはさんであります。トランジスタ2個をヒータにして水晶発振子をはさんで温めています。シリコングリスの表面は乾燥して固まっていました。右側の白いシリコングリスの中に温度検出用のサーミスタがあります。

簡易的に熱電対を入れてオーブンが動作していることを確認します。この状態で62℃でした(Ta 約22℃)。ちょっと低いような気もしますが、熱電対の位置、シリコングリスの状態のためかもしれません。
電源電圧14.5~12Vまでは温度一定でした。テスターの温度計なので1℃単位でしか読めませんけど、11.5Vでは1℃ぐらい下がったような。

ヒーター、回路部分をケースから取り出しました。ヒータのトランジスタ、サーミスタ等の部品をアルミ板で取り囲んでいます。青いシートが断熱材です。
電源ON/OFFによる温度変化でハンダ部分にストレスがかかり、ハンダ切れを起こす恐れがあります。特に、オーブン部分は温度変化が大きいのでハンダ補強しました。もちろん水晶振動子のハンダもです。

アルミ板を取り外しました。
基板にのっているオーブンのヒーター、回路部分です。新しく、シリコングリスをつけます。
この状態で電源を加え、両トランジスタ共発熱することを確認しました。サーミスタが劣化していなければ、この温度が正しいのか…
安定化電源をつないで電流を確認したところ、冷えた状態で起動時 約1A、安定後 約0.1A(Ta 23℃)でした。

基板の裏側…断熱材が貼られていますが、粘着剤がパリパリになっていました。基板にも残っていたので、アルコールできれいにしました。
断熱材の近くに温度補償用のサーミスタとバリキャップが配置されています。なんだか苦労した跡が…(笑) アナログ回路は仕方ないね~
1200MHzのアマチュアバンド防衛のためにも、まだまだ頑張ってほしいですね。