YAESU/STANDARD FT-8900は、28MHz, 50MHz, 144MHz, 430MHz帯の4バンドの運用が可能なFMモービル機です。なぜか「144MHz帯だけ出力がでない」という症状のリグを入手しました。ファイナルは全バンド共通なので、1バンドだけ出力が出ないというのは面白い症状です。これなら修理できるだろうということで入手したものです。
本当は、修理は新年になってからやろうかと思っていたのですが、手元にあるとついどんな不具合なのか確認したくなってしまい、通電確認を始めてしまいました。「だめだ」と思っていてもやめられないジャンキーですね。薬じゃなくて文字通りJUNKですけど(笑)
たぶんこれが、本年最後の無線機修理ネタです。
海外版のFT-8900Rのサービスマニュアルを入手し、回路図をみながら不具合箇所のあたりをつけます。予想では、他のバンドの出力が出ていることからリレーもしくはリレーのドライブ回路ではないかと考えました。リレーは、OMRON G5A-237Pです。これは既に生産中止ですが、交換できそうな富士通高見澤(現FCL)のリレーが手持ちにありました。よしよし。
ダミーロードにつなぎ、電源を入れてPTTを押すと、リレーがカチンとなりました。
あれ？
それでは、ケースを開けて内部の確認です。
おやおや、ファイナルの出力側が焦げているじゃないですか！
コイルも、基板も焦げてパターンも切れているようです。
そして、なんか、コイル変形しているし…既に開封済か?(笑)
OMRON製だと思っていたリレーは富士通高見澤製の表面実装タイプになってました。このリグはYAESUになってから製造されたもののようで、新スプリアス規格対応でしたので、途中で設計変更があったのでしょうね。FT-8900RとFT-8900では回路やパターンも違うのかもしれませんが、実機はサービスマニュアルとはちょっと異なっていました。
焦げていたのは赤のラインでした。144MHz帯が出力されないのは、L1099へつながるパターンが切れているからでした。
とりあえず、L1098とL1099のパターン断線を修復して送信テストすると144MHz帯も出力がでることが確認できました。
しかし、送信すると焦げた臭いがしますし、L1098とGND間でスパーク(リーク?)もしています。炭化した部分は除去しないとダメですね。
炭化した部分を削り取りました。被害は大きく、裏側のパターンが見えるぐらいまで削らないとダメでした。
削った後には、UV硬化のレジストを塗布しました。
L1098とGNDのパターン間隔が狭いのかも知れません.。炭化した部分を取り除くとちょっと広くなりました(笑)
パターンを修復し、焦げたコイルも交換して送信テストすると、出力は定格50Wに対し35～40Wは出るようになりました。まぁ、古い機械だしこんなものかもしれないなと考えていましたが、PTTをおした瞬間にちょっと異臭がするような気がします。最初だけでその後は大丈夫のようなのですが気になります。照明を暗くして、PTT ON/OFFを繰り返すと、PTT ONの時にピカっと光るものが見えます。今度はC1564の所でリークしているようです。しかも、基板内側…炭化した箇所が取り切れずに残っていたのでしょう。何度もPTTを押して確認すると、だんだんとひどくなってきているような気がします。もう一度、コイルとC1564も外し炭化箇所を掃除です。
掃除に熱中して途中の写真を撮るのを忘れましたが、修復後は144MHzでも定格の50Wが安定して出るようになりました。と、いう事は10～15W程度はどこかで熱になっていたということでしょうか…(恐)
そして、もちろん異臭もしません(笑)
部品単体の不良ではなく、焦げたコイルの交換、基板の炭化した部分の除去、切れたパターンの修復で復活しましたが、何が原因だったのでしょうね？
L1098とGNDが(汚れなどで)トラッキングを起こし炭化/リークを起こしたのでしょうか? (見た目では基板も汚くはないようでしたが)
炭化してしまうと、そこからだんだんと被害が拡大します。そのうち、パターンが断線して144MHzの出力が出なくなったのではないかと思います。今回は、(運よく?)先にパターンが切れたので被害が拡大しなかったのではないかと思います。最悪は発煙(したのかもしれない💦)し、ファイナルが飛んでしまっていたかも知れません。ネットでFT-8900の修理を調べてみましたが、今回のようなケースは見つけられませんでした。まぁ、直って良かったです。
私が入手したものは後期モデルの新スプリアス規格対応の技適機種ですが、ファイナル周辺を修理したので念のためスプリアスを測定し問題ないことを確認してから増設申請することにします。(しばらくは使う予定ないですけど)
それでは、皆様、よいお年をお迎えください。くれぐれも除夜の鐘を聞きながらハンダごてを握るのはやめましょうね。