Kenwood TM-833の電解コンデンサを交換した

投稿者: | 2024/02/04

20数年前に購入したKenwoodの430MHz/1200MHzモービルトランシーバーTM-833の電解コンデンサを交換しました。

電解コンデンサは、電子部品の中では比較的寿命が短い部品です。理由は誘電率を上げるために使用されている電解液が蒸発(ドライアップ)し、だんだんと容量が減ってくるからなのですが、1980年代終わりから2000年前までの電子機器に使用された電解コンデンサは、この電解液が漏れてくるという不具合をもっています。いわゆる、四級アンモニウム塩(第四級アルキルアンモニウム塩)問題です。電解コンデンサの劣っている点であるESRを改善する目的で採用された電解液ですが、この電解液が漏れることにより、回路の絶縁性を劣化させたり、プリント基板のパターンを腐食して断線させたりします。そのため、この時期の電子機器はことごとく故障して、なかなか生き残っているものは少ないのだと思います。

この時期は、まだアマチュア無線の人気があった時代で、多くのトランシーバーが販売されました。そして、この時期のトランシーバーも同様の問題を抱えています。しかしながら、そこはアマチュア無線家、普通の家電製品であればとっくに廃棄される運命にあるような、腐食して断線してしまったパターンでも修理して使われている無線機が多くあります。

私が所有しているTM-833もこの時期の製品ですから、この問題を抱えています。今は液漏れと思われる症状は見られないものの、実際にはもう漏れているのかも知れません。今となっては貴重な1200MHzのトランシーバーですので、早めに処置をしておくべきだろうと思いました。

まずは、交換に必要な電解コンデンサの手配です。
使われている電解コンデンサの耐圧と容量をチェックして、部品を発注しました。電解コンデンサは使用温度が高いと寿命が短くなるので、サイズが大きくならなければ、なるべく105℃品を使うことにしました。また、耐圧もなるべく高くしたかったのですが、チップ電解コンデンサは同じ容量で耐圧を上げるとサイズが大きくなる場合がほとんどでした。電源ラインのフィルタとして入っている16V 1800μFのコンデンサは入手できませんでした。2200μFは径が大きくなり、カバーに干渉しそうです。仕方がないので1000μFに交換することにしました。まぁ、大丈夫でしょう。

次は、工具です。

  • はんだごて
    基板からチップ電解コンデンサを外すのに、はんだごてを2本用意しました。YouTubeでは、コンデンサをラジオペンチ等でひねりちぎる方法が紹介されていますが、パターンを剥離させる恐れがあるのであまりお勧めしません。ヒートガンではんだを溶かして外す方法もありますが、慣れないと周辺の部品を溶かしたり、思わぬ部品が外れたりしてしまいます。なので、ちょっと手間はかかりますが、チップコンデンサの両端子にはんだごてをあてて外す方法が一番確実だと思います。はんだが溶けにくい場合は、フラックスを少し塗ると外しやすくなります。私はフラックスはあまり好きではないので、はんだを少し足して外しています。
  • はんだ吸い取り器
    ディスクリートの電解コンデンサ(スルーホール部品)を外すときに使います。
    また、チップ電解コンデンサを外したり、つけたりするときに周辺の部品が邪魔になる事があります。この場合は、邪魔になる部品を取り外して作業するのが安心です。部品の取り外しには、はんだ吸い取り線等を使いますが、できれば電動のはんだ吸い取り器を用意されることをお勧めします。私は白光のFR-301を使用しています。昔々つかっていたはんだ吸い取り器には、あまり良い印象がないのですが、FR-301はなかなか良いです。個人で買うにはちょっと高価かも知れませんが、これから修理や電子工作をしようと思っている方は持っていて損はないと思います。スルーホールのはんだも意外とよく吸い取れます。

分解です。

  • 基板を固定しているねじを外します。当然ですね。
  • フロント基板と接続しているフラットケーブルを外します。曲がりやすいので左右均等にちからをかけ、気を付けて外します。ファンのコネクタも外します。
  • 430と1200の基板をつないでいるピン(3本)のはんだを吸い取ります。430側のはんだから外すのがやり易いかも知れません。430側のピンのはんだを吸い取ったら、ひっくり返して1200側のピンの半田を溶かすと簡単にピンを外せました。1200側のピンも外さないと、ひっかかって基板が外せません。
  • アンテナ同軸ケーブルのはんだを外して、アンテナケーブルを抜きます。
  • ファイナルモジュールのシールドを外し、ファイナルのはんだとシールドのはんだを外します。
  • 基板を外します。この時、一度ファイナルも一緒に外した方がストレスがないかもしれません。
    基板を外したら、ファイナルはシャーシに戻しておきます。
  • 430と1200の基板はコネクタで接続されています。基板にストレスがかからないように気を付けながら、基板を外します。

コンデンサの交換です。

  • 電解コンデンサの場所と容量・耐圧をメモ(or 写真)します。
  • コンデンサ交換の邪魔になる、IC207、IC208をパターン剥離に注意しながら外します。
    IC208が干渉するコンデンサは1個だけなので、はんだ作業に自信がある方は外さなくても大丈夫かも。フロント基板の近くにあるセラミックフィルタ(?)もプラスチックなので、溶けないようにはずしておきます。
  • 1200側は、音声ICを外し、フロント基板の近くにあるセラミックフィルタ(?)を外しておきます。
  • ディスクリートの電解コンデンサを外します。
  • チップ電解コンデンサを外します。はんだごてが簡単に入る箇所のコンデンサは、ひとつづつ取り外し、新しいコンデンサをはんだ付けした方が間違いがないかもしれません。交換したコンデンサにはわかるようにマジック等でチェックしておきます。盛大に液漏れしている場合は、コンデンサを外すときにいやーな臭いがします。
  • 電解コンデンサを外したら、コンデンサの下と周辺をアルコールできれいにふき取っておきます。
    私のTM-833は液漏れはしていないようでしたが、念のためアルコールできれいにしました。
  • チップ電解コンデンサのはんだづけは、予めチップ電解コンデンサの足に薄くフラックスを塗っておくとはんだ付けがやり易いです。チップ電解コンデンサを極性を間違えないように基板パターンにおいて、こて先に少しはんだをのせておいて、まず片方の端子をはんだづけし、そのあとでもう一方の端子をはんだづけします。はんだ付けに慣れてくれば、フラックスをつけなくても(糸はんだの中にフラックスが入っています)簡単にハンダ付けできます。こて先にはんだをのせたら、手際よくはんだ付けするのがコツです。YouTubeの動画によくあるようなフラックスをべっとりとつける必要はありません。つけるにしても薄くでOKです。私がフラックスを使うのは、はんだが乗りにくいものをはんだ付けするときくらいです。
  • 音声IC周辺の電解コンデンサは、はんだごて作業が無理なくできるように、チップ電解コンデンサの取付順を予め検討しておきます。この時代の基板は、ある程度部品交換修理ができるように考えられていますので、順序を間違えなければ交換はやり易いです。
  • チップ電解コンデンサの交換が終わったら、ディスクリートの電解コンデンサを取り付け、外していた部品を取り付けます。
  • ついでに、3端子レギュレータ 7808のはんだも付け直しておいた方が良いかも知れません。
    このレギュレータはシャーシにねじ止めされているため、フォーミングはされているものの熱によって足のはんだにストレスがかかっている恐れがあります。

あとは、分解したときと逆の手順でファイナル、アンテナ線、基板接続ピンを取り付け、組み上げます。

気になっていた電解コンデンサの交換をしましたので、これでしばらくは大丈夫でしょう。

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